無印良品に学ぶ 新時代に対応する経営戦略【企業研究】

 

こんにちは、 SunnyBizコンサル です。

 

2020年10月1日『無印良品』で知られる(株)良品計画が、10月2日より主力商品72品の値下げを発表しました。

株式会社良品計画(東京都豊島区/代表取締役社長 松﨑 曉)は、「ずっと、見直し。ずっと、良い値。」をテーマに、2020年秋冬シーズンより衣料品の中でも基本の日常着を中心に、価格を改定します。くらしの基本となる衣料品72アイテムの「適正価格」をさらに推し進め、くらしの「役に立つ」ことを目指します。引用元:㈱良品計画HP

今までは、期間限定セールや週末セールが行われていましたが、今後は集客による「密」を避けるためセールは廃止されるとのことです。

 

ちょうど無印良品の値下げがトピックになっていたので、この記事では『無印良品』について掘り下げ、企業分析をしてみようと思います。

 

無印良品が店舗での集客を慎重に取り組みだしたように、今後は人を集めること自体が企業リスクとなりうるため、小売業界は対策を講じていかなければなりません。

 

そこで、今回はこれからの時代において、小売業はどのように戦略を立てていくべきか、大企業に学べるところがないかを分析してみます。

 

この記事ではまず、無印良品を展開する株式会社良品計画について理解を深めるため、会社概要と企業理念について掘り下げます。

次に、無印良品の特徴とマーケティングについて分析し、どのような戦略で企業活動を行っているのかを、客観的に見ていきます。

最後に、無印良品の強みを分析し、そこから学ぶべきことをまとめたいと思います。

 

ビジネスドクター
市場の変化が目まぐるしい中、何が正解で何が成功要因となるか分かりません。ただ、色々な企業の活動を分析することで、自社を救うヒントが見つかるかもしれません。今回の企業分析が何かの気付きになり、戦略を立案するきっかけになれば幸いです。

無印良品とは

画像引用元:㈱良品計画 公式HPより

会社概要

無印良品は、(株)良品計画が展開する製造小売業で、家具・家電・衣料品・家庭用品・食品・文房具など様々な商品を販売しています。

もとは、1980年に西友のプライベートブランドとして始まり、そこから独立して今の(株)良品計画となりました。

1980年12月、株式会社西友のプライベートブランドとして40品目でデビューした「無印良品」は、現在では約7,000品目を展開するブランドへと成長しています。

1989年に西友から独立した良品計画は、「無印良品」の企画開発・製造から流通・販売までを行う製造小売業として、衣料品から家庭用品、食品など日常生活全般にわたる商品群を展開しています。

引用元:㈱良品計画HP 企業情報

今や、国内だけでなく海外へも出店を増やし出店数1033店舗、年商4387億円を超える巨大な市場をつくりあげています(2020年2月期)。

 

今期は、新型コロナウイルスの影響を受け4月・5月と一時的に売上が大幅減となったものの、6月以降は増加傾向にあり、6月~8月の売上は前年同月比増となっています。

しかし、海外での業績不振が影響したこともあり、2020年8月期(第一四半期)の財務状況は営業損益も経常損益も、ともにマイナスでした(営業損益約マイナス29億円、経常損益約マイナス36億円)。

今期は決算期の変更により6か月決算となり、間もなく8月の本決算が発表されます。

最終的な数字が気になるところではあるものの、新たな価格帯での販売戦略も導入されたため、今後の展開が期待されるところです。

企業理念

ここで、(株)良品計画が掲げる企業理念を紹介します。

企業理念

良品価値の探求 Quest Value
「良品」の新たな価値と魅力を生活者の視点で探求し、提供していく。

成長の良循環 Positive Spiral
「良品」の公正で透明な事業活動を通じ、グローバルな成長と発展に挑戦していく。

最良のパートナーシップ Best Partnership
仲間を尊重し、取引先との信頼を深め、「良品」の豊かな世界を拡げていく。

引用元:㈱良品計画 公式HP

この企業理念を見て分かるように、「良品」であることが前提であり、その「良品」を軸に探求し、成長し、発展していくことを目標に掲げ、企業活動を行っています。

良いものの新しい価値を消費者目線で探し、提供するという点において、市場のニーズを先読みした新たな価値創造を目指す企業であると言えるでしょう。

無印良品の特徴

はたらきかた イメージ画像

画像引用元:㈱良品計画 公式HPより

わけあって、安い

無印良品は、「わけあって、安い」をキャッチフレーズに商品開発をしています。

ただ安いだけでなく、きちんと素材にこだわったうえで良い品を安く…という発想により、日常生活において本当に必要なものを本当に必要なかたちでつくることを開発の基本としています。

この「わけあって、安い」は、商品のパッケージやタグを見るとその理由が分かるよう、記載があります。

不揃いであっても、つや出しがされていなくても、素材や品質はなんら変わりはありません。

本当の意味での本来のものの良さをそのままの形で届けることで、枠に当てはめてかかる余分なコストを省いているのです。

つや出しがされていないマットな商品や規格外のお菓子シリーズは、店舗でも大人気の商品です。

包装の簡略化

過剰な包装をしないことも、無印良品の特徴です。

飾らず、もの本来の色やかたちのままを大切にしたい。過剰な包装をしない。まとめて一括包装に。共通容器に入れる。

シンプルなもの作りであると同時に、地球の資源をムダにせず、ごみを減らすこともできるものです。

無印良品の商品はすべて、成り立ちのわけが印刷されているパッケージであっさり包まれていたり、タグがつけられているだけで、店頭に並んでます。引用元:㈱良品計画HP 100のいいこと

箱を使わない事で二重包装を避けたり、陳列用の資材を無くしたり、ムダなものを極力生み出さない工夫がされています。

また、プラスチック原料をなくす、減らすよう製造の見直しを行い、再生紙など地球にやさしい資源を使い、地球環境を守るための取り組みも進めています。

税込価格表示

無印良品の商品は、すべて税込価格による表示です。

税込表示をすることで、ここに〇%を上乗せして…という計算をする必要もなく、商品の価格を一目瞭然で把握することができます。

複雑な計算をする必要が無いことと、見たままのものが価格として認識できることで、消費者は安心して買い物をすることができます。

無印良品のマーケティング

画像引用元:㈱良品計画 公式HPより

ブランドイメージを固定しない

無印良品は、自社で開発した商品でオリジナリティを確立し、シンプルで美しい統一した商品で、世界中にファンを多く持ちます。

そのブランドイメージとはどのようなものでしょうか。

マクドナルドといえばハンバーガー、ユニクロといえばフリース、スターバックスといえばコーヒーというように、その企業の持つ製品や特徴、価値は、ブランドとして捉えられます。

他社との差別化を図るものであり、消費者の購買行動に影響をもたらす製品イメージでもあります。

 

無印良品では、

無印良品が目指すのは、「これがいい」ではなく「これでいい」という理性的な満足感をお客様に持ってもらうこと。引用元:㈱良品計画HP 会社案内

とあるように、作られたブランドや価値ではなく、品質も価値も十分これでいいという、そのもの自体が必要であることの本質を突いたところを理想としています。

何かに特化したこだわりの商品を持っているわけでもありません。

無印良品といえば!!の先に来るものが、個人個人で異なることでしょう。

 

これ「が」いいを、これ「で」いいにすることにより、個々のニーズに合うものを追求するのではなく、広く多面的にニーズを捉えられるようになっています。

固執されたブランドの価値観ではなく、必要なものが必要なかたちで満たされることが目的であるという、無印良品ならではの枠にはまらないブランドイメージを持っているのです。

ターゲットを絞らない

マーケティングでは、市場を細分化し、ターゲットを絞り、顧客がイメージの中で「〇〇といえばここ!」と、自社を選んでくれる立ち位置を明確にすることが重要です(STP分析より)。

STP分析とは? STP分析の全体像を解説します【3分読解】

しかし、無印良品では、あえてターゲットを絞らず、誰もが手に取りやすい商品の開発に力を入れています。

シンプルで際立った特徴が無い商品であることから、老若男女問わず、あらゆる年代の人に愛され選ばれています。

普段使いからビジネスシーンまで、幅広く活躍できるデザインのものが多く、あえてターゲットを絞らず誰もが使いやすいものとすることで、広く市場を取り込んでいます。

このあえてターゲットを絞らないという方法も、ひとつのマーケティング戦略です。

オンライン化

無印良品は、2020年5月1日にAmazon、2020年6月1日には楽天での新規出店を開始しました。

それまでは無印良品の専用サイトからしか商品を購入することができなかったため、オンラインで購入できること自体知らずに過ごしていた方もいるのではないでしょうか。

 

新型コロナウイルスの影響により外出自粛が広まり、店舗での集客が落ち込んだことを背景に、一気にオンライン化が進んだといえます。

オンラインショッピングといえばAmazonと楽天。

ここで集客ができるとなると、誰でも自宅に居ながら買い物をすることが出来るため、外出を懸念する無印良品ファンの需要を一気に掴むことができるでしょう。

これは無印良品にとっても消費者にとっても嬉しい環境の構築であり、今後の売上拡大が期待できます。

時代や生活スタイルの変化に合わせた販売チャネルの開拓は、マーケティング戦略のひとつです。

時代の動きにスピーディーに対応できる無印良品は、さすがと言えます。

無印良品の強み

包装の簡略化

画像引用元:㈱良品計画 公式HPより

商品開発力

無印良品では昨今の健康志向に対応し、糖質10g以下の食品開発に力を入れています。

驚くのはその種類の豊富さです。

パンやお菓子だけでなく、スナック菓子やカレーにおいても糖質10g以下を実現しており、味も美味しいことからリピーターが多く、大きな市場となっています。

2020年の10月下旬からは、糖質10g以下のチョコレートがネットにて販売予定です。

 

糖質を抑える食品の市場は、まだ開拓されたばかりで今後発展が見込めます。

まだまだ今からニーズが高まると見込まれる市場に先立った商品開発力は、今後の市場をけん引する力があると言えます。

商品発想力

無印良品の商品発想力は、今まであるようで無かった消費者のかゆいところに手が届く!を実現しています。

例えば、掃除道具。

掃除道具は、リビングなど部屋に置いておくとどうにも見栄えが悪くなり、部屋の清潔感が失われてしまいます。

そんなちょっと気になる事情を考慮して開発されたのが、部屋に置いても困らない自立する掃除用具です。

すっきりと自立する道具は部屋の隅に収納することもでき、インテリアに自然と溶け込み景観を邪魔しません。

汚れが気になった時にすぐに手に取れる近さに置いておけることは、とても使い勝手が良いです。

他にも、用途によって先端を付け替えることができる掃除道具や、デスク周りをササッと掃除できる自立する卓上ほうき(ちりとり付き)など、その発想があったか!という利便性の高い商品が数多くあります。

 

無印良品の食品の中に「ぽち菓子」というものがあります。

国産の素材を使ったお菓子や、昔ながらの懐かしいお菓子が小さな袋に詰められたもので、どれもひと袋99円

食べきりサイズで、持ち運びにもかさばらず、可愛い小袋に入っているため、ちょっとしたプレゼントやお礼にも最適な商品です。

気持ちとして渡すことができるよう、袋に価格を記載していないところもさりげない気遣いであり、開発時に買い手の心理をきちんと発想していることが分かります。

以前はもっと大袋で販売されていたお菓子類ですが、「ぽち菓子」として量を減らし、価格を下げたことで、ちょっとずつ色々欲しい消費者のニーズに合致し、大きく売上を伸ばしました。

また、最近では一部の店舗で、個包装したお菓子の量り売りも始まりました。

クッキー、マシュマロ、チョコなど小さく個包装されたものが、1グラム4円(税込)で、20グラム以上から購入可能となっています。

ちょっとを色々楽しみたい女性や、ファミリー層の利用を見込んでおり、雑貨と組み合わせたプレゼントとしても活用できそうです。

 

このように同じ使い道や、同じ商品であっても、発想を変えて使い勝手を一新したり、内容量やパッケージを変更することで、新たな商品として市場を開拓することができます。

いちから作り始める訳ではなく、既にあるものを工夫し市場のニーズに近づけるという柔軟な発想力は、無印良品の強みであり、大いに学ぶべき点であるといえます。

シンプルであるというブランド力

無印良品の商品の特徴として、シンプルであることが挙げられます。

機能面においてはあれこれ付けすぎず、必要最小限の機能を載せることで、余分なコストをはぶいています。

ポップ広告にしても実にシンプルです。

余計な文字や強い色を使わず、必要な情報をシンプルに明確に伝えるだけ。

 

シンプルさは、パッケージや包装においても一貫しています。

過剰な包装をせず、無駄をはぶき、必要最小限のパッケージです。

 

食品においては、「素のまま」の素材そのものを味わう商品やドリンクなども多く、余計なものを加えないシンプルさを大切にしています。

 

無印良品はブランドイメージが無いと言われていますが、このシンプルさこそ消費者に広く認知されているブランド力です。

無垢なデザインと素朴でシンプルであることこそが、無印良品のデザイン力であり、ブランド力と言えるでしょう。

時代への対応力

衣料品の主力商品の値下げや、オンライン化など、今の時代に必要な取り組みを即時に対応する力があることは、大きな強みです。

セールを廃止することで「密」を防ぐだけでなく、それに代わる価格戦略で顧客ニーズに応える点は、消費者にとって大変好感のある取り組みです。

商品の構成についても、この時代に合わせ外出着よりも人々が家に居ながらファッションを楽しみ、快適に過ごせるよう家庭で着れる「良品」の開発に力を注いでいます。

 

また、在宅ワークや在宅学習に対応し、家具やインテリアの利用サービスも開始しました(月額800円~)。

仕事環境・勉強環境が整うデスクとチェアをセットにしたものをはじめ、生活環境を整えるためのセットが用意されており、「所有ではなく利用」というコンセプトで事業を展開しています。

 

飲食業界においては、人々が家で過ごすことが増えたことから、自宅で手軽に食べる事のできるレトルト市場が拡大しています。

無印良品のレトルトカレーは、その種類の多さと手軽さ、自宅では作ることのできない本格的な味わいで、人気を博しています。

カレーだけでなく、無印良品のレトルト商品はここ一時で一気に種類が増え、売上も好調です。

レトルト食品に即座に対応できる商品力は、直近で培われたものではなく、今までの歴史の中でしっかりと確実に積み上げてきた企業努力の証であるといえるでしょう。

ビジネスドクター
種類豊富で美味しく、いつ食べても、どれを食べても満足できる無印良品の食品は、今の時代にホッと温かみを注いでくれ、心にも身体にも優しい商品であるといえます。

このような時代の変化に対応する力は、市場において先進的な取り組みとして顧客ニーズを引き出すきっかけになります。

この対応力は非常に大きな強みです。

 

大手企業ならでは…とも言えますが、柔軟な発想や、即座に対応するフットワークの軽さは、中小零細企業であっても真似できる部分が大いにあると思います。

まとめ

無印良品の経営戦略は、苦境に負けない発想力と今まで積み上げてきた商品力、対応力にあると言えます。

シンプルに、ムダをはぶき、コストを抑え「わけあって、安い」「良品」を提供しています。

 

販売チャネルの見直しや商品にかけるムダを省くことは、どの企業でも取り組める事のひとつです。

今まで当たり前としていたことが本当に必要な事なのか、今一度見直してみるのはいかがでしょうか。発想を転換することで新しい展開が見えて来るかもしれません。

無印良品のベースには、「良品」を消費者目線で創造していくという、企業理念があります。

今回の企業分析をひとつのきっかけに、自社の掲げる理念と自社の強みを今一度洗い出し、これからの時代をどう発展させていくか考えてみてはいかかでしょうか。