こんにちは。 SunnyBizコンサル です。
今回は企業の経営戦略について、既存の企業を参考に分析してみます。
分析させていただく会社は『日本マクドナルド株式会社』です(以下マクドナルド)。
■日本マクドナルド公式ウェブサイト//公式HP McDonald’s Japan
■参考//マクドナルド(Wikipedia)

マクドナルドは、アメリカ・マクドナルドのフランチャイズ企業であり、日本では、1971年に銀座1号店がオープンしました。
マクドナルドはこれまでに、赤字転落、食品の賞味期限切れ問題、異物混入事件など、数々の苦境を経験しています。
しかし、その数々の苦境をしっかりと乗り越え、今や外食産業におけるトップ企業へと成長しました。
世界が大混乱に陥ったコロナ禍において、2020年4月の顧客単価が、前年単月比「31.4%増」という驚異的な数字を発表しており、一人勝ち状態と言われています。
今回の記事では、
マクドナルドがなぜここまで成長できたのか、その成功要因と、
数々の困難を乗り越えてきた苦境の対策、
そこから学ぶべきマーケティング戦略について触れていきたいと思います。
マクドナルドの戦略は、大企業・中小企業問わず、学べる部分が多くあります。
今回の企業分析が、経営戦略を立てる際の参考になると幸いです。
もくじ
マクドナルドの成功要因

優れたシステム・マニュアル
マクドナルドには様々なシステムとマニュアルがあります。
商品の提供システム
どこの店舗で食べても味が変わらないことや、商品を注文してから私たちの手に届くまでの商品提供の速さには、驚くものがあります。
これは、商品が注文されてから私たちの手に届くまでに、徹底したマニュアルと、効率化を図る仕組みが多く採用されているからです。
材料のほとんどが、店舗での調理を最小限にするよう加工されており、調理時間や分量も誰が入っても同じように出来るよう、細かく設定・マニュアル化されています。
優れたビジネスシステムが構築されているからこそ実現できるものです。
マニュアル
接客、調理、在庫、教育すべてにおいて、徹底的なマニュアル管理がされています。
近年では、マニュアルが紙媒体からタブレット式へと変更されました。
これにより、指導者が隣にいなくても動画やゲームを使って1人でマニュアルを覚えることができるようになり、生産性・効率性があがっています。
マクドナルドでは、全員が60点でマニュアルをこなせれば良い…という設定で管理をしているため、結果、誰が欠けても誰かがフォローできる体制で店舗が回る仕組みとなっています。
セルフサービスシステム
顧客を巻き込んだシステムもあります。
私たちが店舗へ行き、商品を注文し、席について食べ、ゴミを捨てて帰るという行為、この行動自体も実はマクドナルドのシステムのひとつです。
この流れの中でマクドナルドのスタッフが関わる部分は、商品のオーダーと商品の提供部分のみです。
あとは、顧客がセルフサービスで全てを行ってくれるため、配膳も片付けも、ごみの分別も、人件費を使うことなく行うことができています。
私たちも自然な流れでシステムの一部に参加しているのです。
モバイルオーダーシステム
スマホのアプリを使って商品のオーダー・支払いができるシステムを、マクドナルドはいち早く導入しました。
日常生活における環境を整備することを「インフラ整備」と言いますが、このアプリを使った注文・決済システムが、今の時代に一歩先行く「インフラ整備」となり、大きな収益基盤を作ることになりました。
このアプリによる取り組みは以前からマクドナルドが手掛けてきたことではあったものの、結果的にコロナ対策にも繋がり、一人勝ちと言われる成功要因になっています。
これらのシステム・マニュアルは常に改善が検討されており、コスト削減、効率化をさらに目指した取り組みが行われています。
コラボレーション力
マクドナルドの商品でよくコラボレーションされる商品があります。
マックシェイクです。
- 森永ミルクキャラメル
- カルピス
- 明治チェルシー
- プッチンプリン
- 森永ラムネ
など、今まで、他社の人気商品とコラボした商品を数多く販売してきました。
直近では、2020年7月17日より、ミニオンズとコラボしたマックシェイクバナナ味が販売されています(※その他コラボ商品あり。2020年7月現在)。
他社の製品とコラボレーションすることにより、話題性があり、ブランド力も高まり、競合他社との差別化を圧倒的なものとします。
話題性
今触れたコラボレーション企画も話題性のある取り組みですが、マクドナルドは今までにも数多くの話題を作っています。
メガマック
メガマックは、既存メニューのビッグマックをさらに大型ハンバーガーとして作ったものです。
期間限定で販売されたものの、雑誌・新聞、テレビで取り上げられたこともあり、当初予定していた販売数を大きく上回り、大人気の商品となりました。
初めての「メガ」が登場してから、そのあとも定期的に既存の商品をでっかくして売るという、メガシリーズが誕生しました。
「メガポテト」という、Lサイズ2個分のポテトが販売されたことも記憶に新しいでしょう。
(ちなみに、国によっては逆の発想で、小型ハンバーガーのミニマックもあるそうです)
期間限定商品
- 月見バーガー
- グラコロバーガー
- てりたまバーガー
- 三角チョコパイ
その他、イベント商品として期間限定商品が数多く販売されています。
月見バーガーについては、秋といえば!と言える位に、いち早く秋の訪れを知らせてくれる、期間限定の代表商品です。
その時期にしか食べられないものをあえて販売することで、販売側はコスト調整が出来ること、話題性があること、新規顧客開拓になるなど、重要な戦略となります。
都度でてくる期間限定商品を楽しみにしている人も多いでしょう。
SNSの活用
- インスタグラム
- YouTube
これらSNSには、日本マクドナルドの公式アカウントがあります。
今年に入って「ごはんバーガー」が期間限定で販売されました。
そのごはんバーガーが販売される3日前、Twitterに公式アカウントから投稿されたつぶやきがあります。
「あぁー、、、お米たべたい」
???
ハンバーガーのお店がどぉした?と、気になる投稿です。
このつぶやきが、ごはんバーガーを販売する匂わせツイートだったのか?見事な伏線の回収だ…と、販売時には話題を呼びました。
このようなユーモアのある投稿はSNSでの拡散力も強く、大きな宣伝効果があります。
価格
1990年代のある期間、驚くほどに安い価格でハンバーガーが売られた時期がありました。
なんと、1個 59円。
平日半額(65円)キャンペーンというものから始まり、最終的にはさらに安い59円にまで値下げ。
これは、円高が進み1ドルが100円をきっていたため出来たこと…と言われていますが、
常識破りの価格で大きな話題となりました。
今までハンバーガーを食べたことが無い人たちにも一気に広がり、食べてもらえるきっかけになったと言われています。
ただ、一度ここまで値段を下げると、その後円高が円安になり価値の再設定に迫られた際、一般的には十分安い価格にもかかわらず「高い」と見られ客離れが進み、苦戦することになってしまいました。
話題性という部分では大成功したものの、結果的には赤字路線への入り口となりました。
ターゲットの広さ
マクドナルドは、ターゲットが確立されていない…とみられることがあります。
しかし、それはある意味すべての客層をターゲットにしているともいえる強みです。
ハッピーセット
ハッピーセットは、子供向けに販売されている「おもちゃ付き」のセット商品です。
このターゲットは、一見すると子供のように思えます。
コロナ禍においても、週末限定でトミカがもらえるハッピーセットが販売され、ドライブスルーに長蛇の列ができる現象が起こりました。
過去にはポケモンやドラえもんを扱ったり、その時々で子供たちを引き付けるおもちゃを付け、子供のファンを多く作っています。
ただ、ここで注目すべきは子供ではなく、子供を連れてくる親の方です。
子供が喜ぶ商品を提供することが集客の入り口にはなっているものの、実は、子供を連れてくる親をターゲットとしているのです。
その子供もやがて大人になります。
大人になる頃には、マクドナルドでの食事が特別ではなく、当たり前に食べる味になっています。
ハッピーセットは、子供、親、そして未来の大人をもターゲットにしているということです。
プレミアムローストコーヒー
マクドナルドには、Sサイズ 1杯100円 のプレミアムローストコーヒーという商品があります。
2005年に100円マックとして一部の店舗で試験的に売り出され、その後全国展開してからは、「ドリップしたコーヒーが100円で飲めるの?!」と顧客も、コーヒー業界も驚きでした。
今ではコンビニで淹れたてのコーヒーを買える時代ですが、その当時は100円で美味しドリップコーヒーが飲めるなんて考えられませんでした。
今では改良に改良を重ね、マクドナルドは安くて美味しいコーヒーが飲める店というイメージもついています。
また、プレミアムローストコーヒーは今までに何度も無料配布キャンペーンが行われており、話題になることはもちろんのこと、味を知った人たちをリピーターとして取り込むことにも成功しました。
特に、主婦や年配の方々がティータイムを楽しむきっかけとなり、ターゲットの幅が広がったといえます。
家族クーポン
マクドナルドには無料で使えるクーポンがあります。
単品のものも、セットのものもありますが、最近では、2人用・3人用クーポンも提供されています。
それを使うことにより顧客はお得感を感じて商品を買うことができますが、マクドナルドとしては、結果的に顧客単価を上げることに成功しています。

マクドナルドの苦境対策

マクドナルドは、今の収益構造を確立するまでに多くの苦境を乗り越えています。
どのように苦境を乗り越えてきたのかを掘り下げます。
顧客へのヒアリング
2014年から2015年にかけて食品の賞味期限切れ問題、異物混入事件と、立て続けに食の安全を問われる問題が起きた際、当時社長を務めていたカサノバ氏は、マクドナルドのイメージを一新すべく活動を始めました。サラ・カサノバ氏(Wikipedia)
2015年、1年かけてカサノバ社長は日本全国の店舗を回り、顧客から直に話を聞いて回った…という有名な話があります。
全国の顧客からヒアリングしたことを経営改善案として戦略を立て、清潔な店舗作り、店舗改装、品質管理の向上、品質強化、品質開示、メニュー表の改善など、さまざまな取り組みを行いました。
現在においても、戦略は経営陣が立てるものの、消費者目線で考えるため、従業員から顧客の声を集めて反映させるという、ボトムアップ型の企業戦略をとっています。
商品情報の開示
QRコード
マクドナルドの包装紙には、QRコードが付いています。
このQRコードをスマートフォンなどで読み込むと、原産国や商品のカロリー、栄養価、アレルギー情報などを閲覧することができます。
食の安全性が問われた2015年から取り組みを始め、2016年にはすべての店舗で導入されました。
もともとHP上では発信していた内容であったものの、すべての顧客に周知してもらうため取り入れられたものです。
この取り組みにより、食の安全性にこだわっていることを顧客へアピールすることができ、信頼回復へと繋がりました。
品質保証
マクドナルドでは、材料から最終の製品にいたるまでの全工程をシステム管理し、生産履歴全ての把握が可能となっています。
もし万が一のトラブルがあった場合にも、迅速な原因追及・対策が可能となるシステムであり、その体制も信頼回復のひとつになっているでしょう。
参考//マクドナルド公式HP:品質保証体制
商品バランス
激安販売したことにより、大幅な赤字を作ってしまった過去があります。
一度ついてしまった「安い」のイメージはなかなか消えず、値上げへの抵抗感は強く、値上げによる顧客離れが起こってしまいました。
そこで、お得感のある安い商品の充実と、マクドナルドでしか食べることが出来ない差別化された商品を販売し、低価格商品と高価格商品のバランスをとる戦略を行いました。
それにより、安いものは安いまま、選ばれる商品はきちんとした価格帯でという周知がされ、市場に受け入れられるようになりました。
最近のCMで「ちょいマック」と謳われているように、今では100円・150円・200円で食べられるスイーツやドリンク、ハンバーガーがあり、おやつ感覚で気軽に楽しめる商品として、人気があります。
マクドナルドの経営戦略

ここまで、マクドナルドの成功要因と苦境を乗り越えた対策について触れてきました。
成功要因と苦境対策をマーケティングの視点で見ると、以下の戦略を挙げることができます。
コストリーダーシップ戦略
コストリーダーシップ戦略とは、安い価格帯で商品・サービスを提供し、競合他社に差をつける戦略をいいます。
ただ単に価格を下げて安売りするのではなく、原価・コストを可能な限り抑え、しっかりと利益率を維持したまま、他社と変わらないクオリティで商品・サービスを提供します。
それが実現できるのは、マクドナルドの徹底したシステム化とマニュアル化です。
物流システムを確立し、1つの商品を作り出すまでに徹底的なコスト管理と品質管理が行われています。
また、マニュアルを徹底することで、共有する情報と仕事が統一され、人件費の削減にも繋がっています。
安さと商品品質を両立させることが出来るのは、コストリーダーシップ戦略をとることのできる環境を整備したマクドナルドの強みといえます。
ポジショニング戦略
Q : 安くて手軽に食事ができるファーストフードといえば?
A : マクドナルド
「〇〇といえば△△!」というように、消費者のイメージの中で選ばれる対象に位置するための戦略をポジショニング戦略といいます。
マクドナルドは、様々な成功要因から市場での立ち位置を確立させたといえます。
テストマーケティング戦略
テストマーケティングとは、新製品や新システムを打ち出す前に、地域や期間を限定してその商品・システムを試験採用する実験的取り組みをいいます。
これを採用することにより、参入(GO!)か撤退もしくは改善が必要かを判断し、リスクを軽減することができます。
マクドナルドでは、過去に以下のようなテストマーケティングが行われていました。
いくつか取り上げます。
- 夜マック:東海三県(愛知・岐阜・三重)で試験したのち全国展開
夜マックは、17時以降プラス100円することで、バーガーのパティ(メインの具)を2倍に出来るというものです。
東海三県で試験導入に至った理由は、愛知県で、夜の時間帯にボリュームのあるハンバーガーが売れているから…ということだったそうです。
市場のデータに基づき、試験導入する場所を決めるところも、さすがの取り組みです。
- モバイルオーダー:都心で導入したのち、今年1月より全国展開
スマホのアプリを使い、商品のオーダーと支払いをするシステムで、店舗では商品の受け取りのみを行えるというものです。
これにより、注文時の行列に並ぶことなくスムーズに購入することができ、コロナ禍においても非接触購入できるツールとして高く評価されました。
- おもてなし未来型店舗:沖縄で試験導入
これは、商品を座席まで運ぶ「テーブル・デリバリー」というものです。
昨年試験導入したばかりのものであるため、まだその後の取り組みは分かりませんが、試験結果は出ているようなので、今後の動向が楽しみです。
他にも多数、試験販売がされていると言われています。
全方位戦略
全方位戦略とは、柱となる商品だけに特化したり、ターゲットを限定したりせず、市場を広くとらえて経済活動を行う戦略です。
マクドナルドでいうと、メインのハンバーガーだけでなく、カフェ業界(マックカフェ)や、チキンの販売、ライスバーガーなど、特化したもの以外の商品を出すことで、市場全体を取り込む戦略となっています。
ターゲットが広すぎて明確でないといわれつつも、実は時間帯によってのターゲットや、商品ごとのターゲットが綿密に組まれています。
それらの細かなターゲットではなく、マクドナルド全体で老若男女を問わずに全ての世代をターゲットとすることで、多角的に経済活動を行うことができ、無限の可能性が広がっています。
まとめ

マクドナルドは、今や日本の外食産業になくてはならない存在です。
子供から大人までファンが多く、休日には「マック渋滞」と言われる現象が起きるほど、みんなに愛される企業となりました。
ただ、ここまで来るには数々の試練があり、都度それに対応し、打ち勝ってきた企業努力があります。
近年では一歩先をいく取り組みで、変化に負けない強さというものも持ち合わせています。
これは、大企業だからこそできる部分もあれば、大小関係なく、自社と向き合い顧客と向き合うことで成しえるものも多くあります。
マクドナルドの成功要因と苦境対策から多くの学びがあります。
自社に採用できる部分や戦略を考えてみてはいかがでしょうか。