企業理念と経営理念の違いとは【そこから見える経営理念の重要性】

 

こんにちは、 SunnyBizコンサル です。

 

みなさんは、企業理念と経営理念の違いを明確に捉えることができますか?

 

企業理念とは「創業の精神」と言われ、創業者の想いや志に基づく考え方をいいます。

経営理念は、よく企業理念と同じ意味で考えられます。

しかし、企業理念と経営理念は厳密には異なる概念です。

 

今回は、よく混同される二つの概念をとらえ、その中でも経営理念についてより詳しく掘り下げます。

内容としては、まず企業理念と経営理念の違いを把握するため二つの概念を説明し、それぞれの理念の役割について解説します。

続いて、企業理念と経営理念からなる経営システムの関係を図で表し、イメージを深めます。

最後に、経営理念の重要性について経営者と従業員への影響から考え、まとめていきます。

ビジネスドクター
「理念」とは、物事のあるべき根本的な考え方を言います。企業を経営していくうえでの経営システムを今一度確認し、組織力を高めていくために、改めて「企業理念」と「経営理念」について知って頂けると幸いです。

企業理念と経営理念

企業理念とは(企業理念の概念)

企業理念とは「創業の精神」と言われ、創業者の想いや志に基づく考え方をいいます。

それは、企業として大切にしている価値観や、存在意義でもあり、社会においてどのような役割を担うかという企業目標でもあります。

会社によっては社訓として掲げているところもあるでしょう。

企業理念は、たとえ経営者が変わったとしても変わることがない企業の原理原則であり、会社にとって不変の価値観であると言えます。

 

しかし、企業理念が無い会社も少なくありません。

企業理念が無くてもしっかりと利益を上げる会社もあれば、今は理念に忠実!というよりも、とにかく売上にこだわって成長を目指す時期もあると思います。

 

ただ、理念は企業を支える根本的な考えとなるため、それを掲げることで、ひとつの大きな柱ができることになります。

理念を掲げることは絶対ではないものの、長く企業活動を行ううえでは初心・原点にもなりうるため、重要性を知り、必要性を経営者自らが判断して頂ければ良いかと思います。

企業理念はありますか?企業理念の重要性・必要性を考える

経営理念とは(経営理念の概念)

経営理念とは、企業理念の価値観に基づき、企業の将来のあるべき姿をイメージし、企業としてあるべき姿を定めたものです。

これは企業理念を目指すうえでの方向性であり、企業理念に基づく行動規範(ルール)といえます。

経営理念は、企業を運営していく中での軸となり、重要なかじ取りとなる指針です。

この組織において、何を目的にどこを目指して業務を行っていくのか?という目的意識であり、企業活動を支えるうえでの土台となる考え方になります。

企業理念との関係は、まず絶対的な頂点として企業理念があり、次いでその企業理念に達するべく経営理念があるという構造です。

 

企業理念がない会社においてはこの経営理念が一番上にあり、その時々で達成すべき目標として位置づけられていることもあります。

企業理念と経営理念の違い

ここで、企業理念と経営理念の違いを明確にしておきます。

企業理念と経営理念は同意語である…として説明されている本もありますが、経営・組織について学べば学ぶほど、二つの理念は決してイコールではないことが分かります。

 

企業理念と経営理念の違い
企業理念は企業の象徴として位置するもの

経営理念は、企業理念を目指すために確立するもの

企業理念と経営理念の概念で触れたように、企業理念は創業者の想いや志に基づく創業の精神であり、これは創業者にしか掲げることのできない不変的な企業の存在意義です。

それは、経営者の代が変わろうと時代が変わろうと変化するものではなく、企業を照らし続ける星のように、その企業の象徴といえるでしょう。

 

それとは異なり、経営理念は企業活動の在り方を示す会社の指針となります。

世の中は時代と共に変化し、企業活動もその時代に合わせて進化していく必要があります。

その際、企業理念は不変的なものですが、経営理念は経営者の交代や時代の変化に対応するため、必要に応じて改められるものでなければなりません。

時代と逆行することがないよう柔軟なかじ取りを行うことは、企業経営において重要な戦略の一つです。

 

ただ注意すべきは、経営理念は必ず企業理念に基づくものである必要があります。

そこが揺らいでしまうと、組織として矛盾が生まれ方向性が不明確となり、社会における存在意義も見失いかねません。

経営理念は、企業理念から逸脱することなく、企業全体の行動規範や判断の基準となるよう考える必要があります。

企業理念と経営理念の役割

「理念」の考え方

理念とは「俗に、事業・計画などの根底にある根本的な考え方。出典:広辞苑」を言います。

これは、物事に対して、こうあるべきという根本的な考え方であり、企業の方向性や目的を明確にする軸となるものです。

企業理念と経営理念が同意語で用いられても特に問題がないのは、「理念」としての到達すべき考え方が一致しているからです。

どちらも企業活動を行ううえでの目指すところは変わらず、それが企業を主体とするか経営を主体とするかの違いになります。

主体が違ったとしても、経営理念は企業理念に基づくものであるため目的は同じです。

企業理念の役割

企業=法人はそこに「人」という文字が使われるように、一種の人格を持ち合わせたものと考えられています(法人格)。

企業(法人)を設立するときは、一つの大きな人格を生み出すことになり、その存在を確かなものとして育てていかなければなりません。

「こうなりたい。こうありたい。ここを目指したい。」という創業者の想いは、企業を育てていくうえで活動に大きく影響を与えるため、大変重要なものとなります。

起業の志として、なぜ法人を生み出したのかを企業理念として明確に表すことで、常に初心を明示することができ、その企業(法人)の向かうべき道を照らしてくれます。

たとえ経営者が不在であっても、その代が変わったとしても、創業の精神は変わることがありません。

企業理念は、企業のあり方、存在意義、企業活動の目的としての役割を担っています。

経営理念の役割

経営理念は、企業理念の価値観に基づき、企業の将来のあるべき姿をイメージし、企業としてあるべき姿を定めたものです。

すなわち、経営を行ううえでの指針を立てることになります。

企業は、その活動を行うことにより社会に認められ、必要とされ、最終的に利益を得て成長していきます。

企業理念の価値観は壮大で、ほとんどが漠然としたものですが、経営理念はそこを掘り下げ、具体的に企業理念を達成するために掲げられる活動目標であり、軸となる行動指針としての役割を担います。

企業を構成する経営システム

企業形態のピラミッド構造

企業がどのような形態で作られているかその構造を確認することで、企業理念と経営理念の関係を確認することができます。

それは、しばしばピラミッドの形で表されます。

【図解】

ピラミッド図の解説

企業理念は、経営システムを構築するうえで頂点に位置します。

企業の存在価値であり、社会的な意義であり、創業者の志として企業の目指すべきところです。

 

続いて、経営理念は、企業理念の価値観に基づいて、企業のあるべき姿を追求する行動指針となります。

その下にある経営戦略は、経営理念を実現するために採るべき手段です。

 

経営計画は、経営戦略を具体化したものであり、短期計画・中期計画・長期計画と、その戦略実行のための具体的な準備活動になります。

組織・人事・管理は、組織に不可欠な企業を支えるものであり、一番下の事業・業務活動は日々の業務を表します。

このように図で表すと、企業理念と経営理念が同じものでないことを再確認することができます。

 

ピラミッドで表されたシステムの目線は上に向かっており、これらは上から下まで整合性が取れている必要があります。

上に行くほど抽象的、野心的なものになるものの、これらの整合性が取れていることは企業活動が一貫したものであることを意味します。

整合性をとるためには、経営理念に基づき、経営者の志に向かって正しい業務とブレない戦略を立てていくことが重要です。

経営理念の重要性

経営理念の重要性

経営理念は、ピラミッド図で表したように企業理念を支えるものであり、その下の戦略を率いるものであるため、重要なポジションであるといえます。

経営理念は、それを掲げることにより組織全体を構築することになります。

 

経営理念が重要である根拠を具体的に解説すると、以下のとおりです。

  1. 企業が目指す将来の姿を提示し戦略を立てることができる
  2. 重要な意思決定において決断力をもたらす
  3. 人材採用・組織づくりに役立つ
  4. 自社の存在意義を組織で共有できる
  5. 業務の目的と方向性が分かる
  6. 従業員の行動指針となり達成感につながる

 

ここで挙げたものは、経営者に影響を与えるものと、従業員に影響するものの二つに分けることができます。

それぞれへの影響を詳しく見ていきます。

経営者への影響

経営者に影響を与えるものは①~③にあげるものです。

企業が目指す将来の姿を提示し戦略を立てることができる

経営理念は、企業理念に基づく経営のビジョンであり、企業理念の価値観を明文化したものです。

理念を明示することで、企業の規模が大きくなり経営者の声が一人一人に届かなくなったとしても、明確かつハッキリと目指すべき将来の姿を伝えることができます。

将来の姿が明確になると、それを達成するためにはどのように活動をすべきか、そこを目指すための戦略立案に繋がります。

戦略が決まることで戦略実行の計画を立てることができ、個々の業務に目的が生まれるため、企業活動の道標ができていきます。

②重要な意思決定において決断力をもたらす

経営者は様々な場面で判断に迫られ、重要な意思決定をその都度しなければなりません。

自社が自発的に大きな案件に取り組むこともあれば、外部から大きな仕事が来ることもあり、規模が大きくなればなるほど経営判断は難しく決断に迷いが生じることもしばしばです。

しかし、理念をハッキリと掲げておくことで、そのビジネスで利益が出るかどうかだけではなく、自社がやるべき仕事であるか、自社らしさがあるか、それが経営理念に反する言動にならないか、原点に立ち戻って判断を行うことができます。

経営理念は、重要な意思決定に最終的な決断力をもたらすものであるといえます。

③人材採用・組織づくりに役立つ

経営理念が明確に掲げられていると、そこに向かうための戦略を立てる中で、自社に不足する要素にも気付くことができます。

中でも、企業を構成する人と組織づくりに関わる部分は大変重要です。

理念に向けた戦略実行の際、やみくもに人員募集を行うのではなく、不足する部分を補う人材をピンポイントで募集したり、専門チームを作ったり効果的に組織を作る事ができます。

また、理念を明確にすると、掲げた理念に共感した人材が集まることも考えられます。

理念に共感する人材が集まると、みんなが同じ方向を向いてスタートしやすいため、指示理解が早く、物事が決まりやすくなります。

さらに、志を同じくするメンバー(同志)で動くことにより企業の結束力が高まり、より高い成果を上げることに繋がるでしょう。

理念に共感する人材が集まることで、離職率も下がる傾向にあります。

従業員への影響

従業員への影響は④~⑥を挙げることができます。

④自社の存在意義を組織で共有できる

経営理念が明確であることにより、経営陣と従業員が自社の存在意義を共有することができます。

普段の仕事では自分が行う業務が社会へどのように貢献し、必要とされているかは見えにくいものです。

しかし、企業が社会に認知され必要とされると、それが自社の存在意義として実感できるようになり、経営者だけでなく、従業員自身も自分の仕事に価値を見出し、組織全体で自社の存在意義を共有することができます。

⑤業務の目的と方向性が分かる

経営理念は、従業員が取り組む業務の目的を明確にし、どこへ向かっていくのか方向性を明らかにします。

目的と方向性を料理に例えると、甘口のカレーを作ることが達成すべき事としてあれば、材料が決まり、野菜の切り方が決まり、調味料が決まり、完成するものが明確に見えます。

一方、材料だけが与えられ、完成させるべきものが不明確であれば、同じ材料を使ったとしても他のメニューになったり、同じカレーが出来たとしても甘口ではなく辛口になったり、目的と方向性がブレてきます。

経営理念を確立し明示することは、目指すべきものが見えるため、業務上のブレを防止し、業務に一貫性をもたせ、活動の目的と方向性を確立させることになるのです。

⑥従業員の行動指針となり達成感につながる

経営理念は、従業員が現場で行動を起こす時にも、大きな指針となります。

お客様との接し方、クレームの対応、新規案件の取得、営業など、日々の業務を行ううえで、この判断は会社の目指すべき方向性と合っているか?何のためにこの仕事をやるのか?この仕事受けていいのか?など、従業員にとっても重要な判断軸になります。

従業員がしっかりと判断できれば、社長が不在であっても会社が自動的に回るようになり、ひとりひとりも大きく成長していきます。

自ら考え行動することは、個々の責任感とモチベーションにもつながり、自分の判断で正しく業務をやり遂げた時には、そこから達成感を得ることができます。

 

このように、経営理念は経営者にとっても従業員にとっても影響力が大きいものです。

経営理念を明確に掲げることは企業にとって大変重要であるため、より明確に浸透しやすいものを行動指針として掲げていく必要があるといえます。

まとめ

企業としての規模が大きくなればなるほど、多くの人材が必要となりそれを取りまとめる力が必要です。

全員が同じ方向を向いて動き出した時、企業は大きな成長を遂げるでしょう。

一番効率的かつはっきりと企業の向かうべき道を明示することができるものが、経営理念です。

企業の組織力を高め、長く確実な成長を遂げるため、経営理念について改めて考えてみるのはいかがでしょうか。

参考書籍