こんにちは、 SunnyBizコンサル です。
企業が関わる会計。
ほとんどの企業では、一年間の業績を決算という区切りでまとめ、財務諸表を作成しています。
財務諸表は「財務会計」という会計にならって作成されるもので、決算書ともいわれます。
今回は財務諸表を作成するうえでのルールについて解説します。
要点はこちら。
- 財務諸表を作成する時のルールって?
- 一般原則って何?
- なぜルールが必要なの?

会計のルール

企業会計原則
世の中には、大きな会社もあれば小さな会社もあります。
業種も、製造業、サービス業、建設業など様々です。
もしもこれらの会社が決算の際、何のルールもなく自由に財務諸表を作成することが出来たとしたら…
それは外部の利害関係者にとって見にくいものであったり、信頼できる情報にはなりえません。
会社にとって都合の良い情報だけを載せたり、内容が不明瞭であったり、企業の恣意性が介入する可能性があります。
そこで、会計には処理をするうえでの基本的な考え方として、「企業会計原則」というルールが定められています。
企業会計原則とは?
″企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当って従わなければならない基準である″引用元:昭和24年7月9日付 経済安定本部企業会計制度対策調査会中間報告
企業会計原則は法律ではないため、守らないことによる罰則はありません。
しかし、会計に関わる法律の中の「会社法」や「金融商品取引法」では、会計処理について一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うべきと定められています。
企業会計原則にも「一般に公正妥当と認められたところ」という文言があるように、これは法律ではないものの、強制力の強い従うべき基本的ルールという風に解釈されます。

企業会計原則の構成

企業会計原則は、3つの原則から成り立っています。
- 一般原則
- 貸借対照表原則
- 損益計算書原則
一般原則
一般原則は、「包括的原則」と呼ばれ、会計情報の基礎となる記録、測定、表示といった会計処理について定められたものです。
一般原則には次の7つがあります。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本取引・損益取引区分の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
一般原則を守ることは会計処理の基礎を構築することであり、一般原則が守られることで公正・妥当とみることができます。
貸借対照表原則
貸借対照表原則とは、「貸借対照表」を作成するうえでの基本的ルールです。
財務諸表のひとつである貸借対照表は、会社が持つ財産と運用する元手資金を記した、一定時点の財政状態を表します。
それを読めば、外からは見えない会社内部が見えてくるため、会社の健康状態を把握するものであるといえます。
どのように表示するのか、どのように並べるのか、金額はいつ時点のものを使うのか…など、作成するうえで守るべき基本的なことが定められています。
損益計算書原則
損益計算書原則とは、財務諸表のうちの「損益計算書」を作成するうえでの基本的ルールです。
損益計算書は、1年間の儲けを表すものです。
一定期間の会社の利益(成果)を計算することから、「企業の成績表」ともいわれています。
損益計算書原則では、損益計算書に載せるべき数字の計算基準や、内容、表示方法などが定められています。
一般原則の内容

一般原則の7つについて、個別に見ていきます。
真実性の原則
真実性の原則は、その言葉通り「真実」な報告をしましょう、ということ。
会社の都合や思いは抜きにして、きちんと事実に基づく真実な報告が行われる必要があります。
会計の記録を作成するうえでも、外部へ報告をするうえでも、誤った処理やウソがあっては信用できる情報とはなりえません。
真実でない処理や報告は関係者の判断を誤らせ、多大な影響を及ぼすでしょう。
作成される財務諸表が真実に基づくものであることは、会計処理を行ううえで当然守られるべきことであり、真実性の原則は、一般原則の中で最も重要とされる原則です。
正規の簿記の原則
正規の簿記の原則とは、すべての取引が漏れなく記載され、その記録が客観的に立証でき、決められたやり方を継続的に統一して帳簿に記録することを求めるものです。
漏れなく記載されているか?という点を「網羅性」
客観的に立証できるか?という点を「検証可能性」
決められたやり方を継続的に、統一して処理しているか?という点を「秩序性」
という言い方をします。
この3つが備わっていることが正規の簿記の原則の要件であり、これを満たす帳簿記録を一般的に「複式簿記」といいます。

資本取引・損益取引区分の原則
資本取引とは、企業の資本金に増減を加える取引のことを言います。
資本金は、主に投資家から集めた出資金であり、資本剰余金とは、出資金に組み入れなかった部分を意味します。
損益取引とは、事業活動から生まれる利益の増減に関わる取引を言います。
利益剰余金は、会社が積み上げてきた利益の累計であり、貯金のようなイメージです。
このように、資本取引と損益取引は、性質が全く異なるものです。
これらの資金は、企業を動かしていくうえでとても大切なものであるため、性質が異なるふたつを混同することは、適切とは言えません。
資本が不当に流れたり、誤った利益の表示になることを防ぎ健全な企業財務を確保するため、この原則は重要な意味を持っています。
明瞭性の原則
明瞭性の原則は、主に外部の利害関係者に誤解を与えないよう、分かりやすく情報を開示するため求められるものです。
具体的には、取引を相殺せずに総額で表示することや、取引の性質・項目ごとに区分をもって表示すること、補足が必要な項目についてきちんと触れることが求められます。
例えば、売上げとそれにかかった仕入れが相殺され、結果の利益だけ表示された場合、外部からは取引の規模や、どのような取引に基づくものなのかをきちんと把握することができません。
また、その利益が通常の営業活動の成果としての利益なのか、営業活動以外の臨時収入によるものなのか、性質ごとに区分して表示しなければ、企業の業績をきちんと表しているとは言えないでしょう。
財産・債務なども同様です。
中身が伏せられ合計で表示されていた場合は、投資家などは適切な投資判断ができません。
現金でいくら持っていて、商品がこれだけある…ということや、返済すべき借入金や仕入代金として支払うべき金額がこれだけある…
ということが分からなければ、企業の状態が見えてきません。
利害関係者が企業の状態を正しく判断することができるよう、明瞭性の原則は大変重要です。
また、明瞭性の原則では、ある取引について複数の会計処理が認められている場合、自社がどの処理を採用しているかを明らかにするため、その内容を注記に記すことが求められています。

継続性の原則
企業会計では、ひとつの取引について複数の会計処理が認められているものがあります。
その処理を企業の都合であれこれ変更することができると、利害関係者の判断を誤らせるだけでなく不正の温床になりかねません。
毎期、同じやり方で継続して処理を行うことは、期間ごとの比較を可能とするだけでなく、不正な利益操作を防ぐこともできます。
一貫性のある会計処理を求めるものとして、継続性の原則は位置しています。
保守主義の原則
保守主義の原則は、企業財務の安全性を確保するため、企業にとってのリスクが予測できる場合には、それを考慮した会計処理を求めるものです。
例えば、取引先の業績不振により資金の回収が見込めない場合や、商品の返品が予測される場合などは、一定の要件に従って損失の処理を行います。
保守的な処理を行うことで、利益を過大表示することなく、安全性の高い財務情報となります。
ただし、過度の保守主義は事実をゆがめ、適正な会計処理とはいえなくなるため、他の原則にも従ったうえで適切に取り入れる必要があります。
単一性の原則
単一性の原則は、要するに、裏帳簿や二重帳簿の作成を禁止するというものです。
財務諸表は、
- 株主総会提出のため=投資家用
- 信用目的のため=金融機関・取引先用
- 租税目的のため=税務署用
と、その目的に応じて、形式が異なる場合があります。
しかし、財務諸表の形式にかかわらず、その基となる会計帳簿は必ず同一のものであり、企業に1つしか存在してはいけません。
これが守られることにより、目的に応じた利益操作や、情報秘匿を防ぐことができ、恣意性を排除することに繋がります。
企業会計原則の必要性

「企業会計原則」は、一般原則・貸借対照表原則・損益計算書原則から成り立っており、この原則が守られることで基準を満たした処理となり、公正妥当であるといえます。
このルールを守ることで、事業内容や決算のタイミングが違ったとしても、同じ基準で情報を比較することができ、外部の利害関係者に有益な資料となります。
また、企業ごとの処理ではなく、きちんと基本ルールを設けることで、不正や利益操作を防止することにも繋がります。
会社のことを知りたいと思った際、財務諸表はとても重要な情報ツールです。
財務諸表が比較可能性を備えたものであり、公正・妥当なものとするため、企業会計原則は守られるべきものであり、必要不可欠なものであるといえます。
まとめ
企業会計原則は、会計の基本的な考え方として、なぜこのような処理をしなければいけないの?の答えが詰まったものです。
覚えて活用するものではないものの、当然に理解し守るべき会計のルールであるため、ある程度把握しておく必要があります。
経理・事務担当者だけでなく、会計に触れる全ての方々の知識として広く理解されると幸いです。